近年、各臓器における手術の世界的な流れは、拡大手術から縮小手術へ向かっています。
すなわち、胃がんや大腸がんなどあらゆるがんにおいて、やり過ぎ手術をやめようという動きになってきています。
これは、たとえ一生懸命に手術をしても拡大手術ではその合併症で命を落とす方がいらっしゃったり、最近の抗がん剤の進歩により、拡大手術そのものよりも手術後の抗がん剤治療の方が重要であることも多いからです。
そんななか、乳がんにおける腋窩リンパ節郭清については、最近その治療的意義に疑問が持たれていました。
それでは今回は、乳がん診療ガイドライン2008 外科療法 をひもといてみましょう。
「最近では乳房切除後の胸壁放射線照射による局所コントロールの改善で死亡率が10%減少する事が示され、腋窩郭清による局所制御・生存率への影響について注目が集まっている。
NSABP B-04試験では、25年の長期follow upにおいて、腋窩リンパ節郭清が生存率において有意差を認めないことが示された。
しかし、これに反論して1999年には腋窩郭清群と非腋窩郭清群との6つの比較試験のメタアナリシスが行われ、腋窩郭清群での生存率の改善が4-16%であるという報告がある。
このように、NSABP B-04試験の結果のみで、腋窩郭清に意義がないと判断することに警鐘が鳴らされている。」
難しいお話は何回かに分けてお勉強しましょうか。
それにしても最近の患者様はみなさまとっても勉強熱心で私たちがたじたじです。
乳腺のしこりを感じてから外来受診までの間に、乳がんについて、手術について、乳房再建について、そして抗がん剤やホルモン治療、さらにはハーセプチンなどについても既に勉強済みで外来受診をされるかたもいらっしゃって、びっくりするのと同時に、それだけ乳がんは女性を不安におとしいれてしまうのだな、と感じます。
でも、多くの不安要素は間違った情報が原因のこともあります。
今日も不安でいっぱいの患者様がいらっしゃったので、ずっとお話していました。
最後にやっと笑顔をみせてくださってほっとしましたが、人の不安を解決してさしあげるのは、なかなかお時間が必要なんだな、と思いました。
今日は外来終了時間3時間オーバーでした・・・。
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はじめまして、こんにちわ。
時々こちらのブログを拝見させていただいて勉強していました。
異時性両側乳がん患者(50才)です。
もし個人的な質問・コメントがこちらのブログポリシーに反していましたら、お手数ですがご削除ください。
5年半前の2回目の手術時にリンパ節郭清を行いませんでしたが、このたび悪性のリンパ節腫大が見つかりました。
現在、リンパ節郭清するか否かで悩んでおります。
「局所コントロールが長期的な生存率の改善に寄与するかどうか?」がはっきりとわかりません。
また、「リンパ節郭清をせずに放射線治療をした場合の、予後の違いについて」もはっきりとわかりません。
そこで、是非先生のご意見を伺いたいと思いました。
先生が大事な患者さんをたくさん抱えてらして、大変お忙しいのは重々承知しております。
先生に申し訳ない気持ちでいっぱいですが、もしも外部の患者にもお答えいただけるようでしたら、どうかお力をお貸しください。
ふじくろ様
はじめまして。
ご訪問どうもありがとうございます。
両側乳がんとの闘病。
多くの悩みと不安を乗り越えながら、確実に治療をおこなってきていらっしゃいますね。
私も少しでもお役にたてますようにお答えいたします。
ふじくろ様の場合には、前回はセンチネルリンパ節生検を行われたのでしょうか。
非郭清あるいはセンチネルリンパ節生検後のリンパ節再発についてのご質問ですね。
これは、病院によっても患者様の状況によってもお答えは変わって来るとは思いますので、私のご意見をお伝えします。
一般的には、郭清が可能であれば郭清をするべきであると考えます。
腕のリンパ浮腫の合併症の可能性はございますが、これは腋窩リンパ節転移が悪化しても起こる可能性はあります。
局所コントロールが生存率向上に寄与する可能性が指摘されておりますので、まずはリンパ節郭清をおこない、転移リンパ節個数を確認の上、さらに放射線治療を追加するご相談をされる方が確実であると考えます。
これはあくまでも私の考えですので、主治医の先生にリンパ節郭清が可能かどうか、また術後放射線治療の可能性についても再度ご相談くださいませ。
以上、少しでもご参考になりましたら嬉しいです。
色々なご不安があると思います。
またお困りの時は一緒に今後のことを考えていきましょう。
治療は、可能な時に確実におこなっていくことが大切ですからね。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
yasuu
大変丁寧なご回答とお心遣い、ありがとうございました。
また、説明不十分で申し訳ありませんでした。非郭清で術後5年半経過しました。
先生のご回答から「局所コントロールが生存率向上に寄与の可能性」と理解いたしました。
また郭清の際に、放射線治療を追加することも検討した方がよいことも理解いたしました。(これについては、胸壁への照射について悩んでいます。)
現在腫大は1カ所(CT,エコー)1cm、遠隔転移なしですので、主治医の先生によく相談していきたいと思います。
「治療は、可能な時に確実におこなっていくことが大切ですからね。」のお言葉が強く胸に響きます。
お忙しい中を1個人のためにお時間をいただきまして、本当にありがとうございました。
ふじくろ様
こんにちは。
暖かいお返事をどうもありがとうございます。
これからも、お悩みの際にはまたご相談くださいませ。
可能な限りお力になれるようにいたします。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
yasuu
はじめまして。いつも拝読しています。50才。
3年前に左側温存手術、センチネル生検陰性で放射線治療後ホルモン療法しています。抗がん剤はしませんでした。
先日、左リンパ転移見つかり、針生検で悪性で、来月リンパ郭清手術を受けます。その後、抗がん剤TC療法した方がいいと言われています。ですが、放射線という選択もあるのでしょうか。先生のお考えをお聞かせ下さい。